石垣市健康福祉センター(石垣市登野城)で10月14日、日本軍「慰安婦」についての講演会が開催された。
10日~14日まで八重山平和祈念館で開かれた「沖縄戦と日本軍『慰安婦』展」に合わせ開催されたもの。主催は同展石垣実行委員会。女性史研究者の宮城晴美さんと郷土の研究者として知られる大田静男さんが、沖縄県内にあった慰安所について解説した。
宮城さんは、慰安婦制度の目的が兵士の戦意高揚や性病予防、性的暴行によって生ずる対日感情悪化の防止など、全て軍の戦略のもと成り立っていたことを強調。慰安所設置が地元住民を無視した形で押し進められたことなどさまざまな問題を、陣中日誌や元慰安婦、住民の証言をもとに指摘した。米軍統治下は米兵による性犯罪が絶えず、女性であれば乳幼児までも被害を受けていた実態など、終戦後も続いた性暴力を紹介。最後に「軍隊を維持するため女性が利用されていた。どんなに地元が反対しても軍や政府の決定は強引に進められるというのは、今も昔も変わらず双方に乖離(かいり)があるということを認識しなければならない」と結んだ。
大田さんは「八重山における日本軍慰安婦」と題し、慰安所設置の時期や経緯、利用料金をはじめ、慰安所を利用した元兵士への聞き取り、慰安婦の出身地によって階級が生じていたことなど、八重山にあった慰安所の実態を紹介した。その上で、「慰安婦の問題は人間がどう扱われるかといった人権の問題」と指摘。さらに「尖閣領有権問題や自衛隊配備問題なども独立しているように見えて根本は同じ」と語気を強めた。
質疑応答ではたくさんの意見や質問が挙がり、参加者らの関心の高さがうかがえた。中には慰安所の近所に住んでいたという92歳男性の話など、島内の慰安所にまつわる体験談もあった。
聴講した50代女性は「八重山にも慰安所があったとは知らなかった」、33歳男性は「慰安婦問題を国家間の政治に転用するのではなく、戦争が生んだ人権の問題として事実は残していかなければならない」と話していた。