与那国島で11月22日(旧暦の10月13日)、クブラマチリを皮切りに25日間にわたるマチリ・カンブナガが始まった。
マチリ(カンブナガ)は与那国島の存続と繁栄を祈願する大切な祭祀で、神が降りてくるという神の月(カンヌティ)に行われる。カンブナガとは神の節という意味で一年の最後を締めくくる行事。このマチリを終えると島は正月を迎える準備を始める。
クブラマチリ(久部良公民館主催)では庚申の日に異国人退散を、ウラマチリ(東公民館主催)では辛酉の日に牛馬繁殖を、ンディマチリ(比川公民館主催)では甲子の日に子孫繁栄を、ンマナガマチリ(島仲公民館主催)では壬午の日に五穀豊穣を、ンダンマチリ(西公民館主催)では葵未の日に航海安全を、5つのマチリでそれぞれ祈願する。
島の人々は昔からマチリの期間中、四足の動物、特に牛の屠殺と食肉を禁じている。理由についてはさまざまな説があるが、その一つとして昔から生活の中で農耕や交通を助け人々の暮らしに欠かせなかった牛や動物たちを敬い、感謝するためマチリの期間中は屠殺しないといわれる。
ンダンマチリを終え、全てのマチリが終わるとアンタドゥミと呼ばれる儀式が行われ、司達は神衣を脱いで人間に戻り、それと同時に期間中の禁忌もすべて解かれる。
古くから伝わる年中行事をただ淡々と消化するのではなく、その意味を知ったときに伝統は初めて人の心に価値をもたらし、感謝や厳粛な気持ちを植え付ける。マチリは12月16日(旧暦の11月7日)のアンタドゥミまで続く。