熱研市民公開講座「東南アジアの熱帯果樹」が9月13日、石垣市健康福祉センター(石垣市登野城)で開かれ、訪れた市民が熱心に耳を傾けた。
当講座は、熱帯・亜熱帯の開発途上地域の農業の持続的発展、作物の安定生産に寄与する技術の開発を進める国際農林水産業研究センター熱帯・島嶼研究拠点(熱研)が、研究内容を市民に公開する目的で定期的に開いているもの。今回で22回目。研究員の香西直子さんがタイやマレーシア、インドネシアやラオスを中心とした熱帯果樹の生産実態や具体的な栽培方法、農家の取組みなど、現地滞在を通しての調査結果を紹介した。
その中で、ランブータンやドリアンなどのマイナー果樹が世界でも東南アジアで多く生産されている統計結果を示し、現地で陳列、生産されている状況をスライドショーで紹介。タイではグレードの選別が徹底されており、上級の物は中国や日本、欧米などに輸出、下級のものはラオスやカンボジア、地元の市場に流れる現状から「国力の差が見られる」と示唆。一方、ラオスでは品種の選別を一切行わず、地方の商店にも輸出果実が多く販売されている生産実態を紹介した。
この他、タイで付加価値を付けるために生産者が行っている例を写真で説明。軽労化、低コスト栽培のために低樹高栽培にしていることや、品質保持のための「袋かけ」や余分な果実を除去する「摘果」の方法、整枝剪定(せんてい)技術の導入など、現地農家の取り組みを具体的に示した。
質問コーナーでは多くの市民からの質問があり「レンブ(フトモモ科)の袋掛け場面があったが、袋に水滴がたまった場合はどうするのか」「摘果の方法を教えて」といった講演内容の技術的な質問から、「家で栽培を試みた果実は芽を出さないが、雄雌あるのか」「マンゴスチンを植えてみたいが、日本で購入した果実の種を埋めて発芽するのか」などの身近な質問、「タイで果物を購入した場合、農薬汚染への心配はあるか」「香西さんのおすすめだと思う東南アジアの果実を3つ教えて」など、幅広い質問が飛び交った。
講演の最後に香西さんは「東南アジアでいろいろな農家を訪れ、それぞれの地域で発展しようと独自に試みていることを知った。タイは技術が進歩し過ぎて併発する問題があり、ラオスでは輸入果実に勝てない問題があり、それぞれの問題に直面していることも見てきた。私はこの人たちをどうすれば助けられるかを考えていきたいし、少しでもお役に立てたらと思う」と締めくくった。