石垣市出身・在住の声楽家・国吉なおみさんによる「いのりうたコンサート」が10月29日、石垣市民会館大ホール(石垣市浜崎町)で開かれ、被災地の復興と平和への祈りを込めた歌が会場に響き渡った。
国吉さんは尚美学園短期大学声楽科卒業。沖縄創作オペラ協会の音楽劇や作曲家でシンガーソングライターの海勢頭豊さんの全国コンサートツアーに参加。1993年のNHK「新しい沖縄のうた」では、海勢頭さんが作曲、国吉さんが歌った「初恋ミンサー」が放送された。映画「GAMA月桃の花」の主題歌「月桃」は国吉さんの代表曲として沖縄で広く愛唱されているほか、TBS「NEWS23」のエンディングテーマにも起用された。1997年に帰京後は音楽教室を主宰。歌で平和を伝えるコンサート活動を展開している。
今年6月23日にはCD「いのりうた」をリリース。沖縄の心と平和を発信し続ける海勢頭さんの作品をCDに残すため、昨年11月から準備してきたという国吉さん。その矢先に東日本大震災が発生。「移り変わる島の情景や景色、沖縄の歴史を記憶から記録に残したいという思いと、震災で亡くなられた方々の冥福を祈り、被災地の一日も早い復興と心穏やかな生活、平和への祈りを込めてCDを作った」と話す。
コンサートは2部構成。第1部はピアニストの次呂久早苗さんとのステージで、「里の秋」「紅葉」など秋の美しい情景を歌った唱歌や童話のメドレーでスタート。当日は小さい子どもたちも訪れていて、沖縄や八重山の民謡など知っている曲が歌われると一緒に口ずさんだ。「今年は誰かのために祈るということについて考えさせられる」と話して歌った曲「アヴェ・マリア」「アメイジンズ・グレイス」では、透き通った国吉さんの歌声が会場中を包み込み、聴衆は静かに聴き入っていた。
第2部は海勢頭さんと、娘でバイオリニストの愛さんとのステージで海勢頭さんの作品を次々と披露した。沖縄の戦後の風景を描いた「さとうきびの花」、沖縄戦で従軍慰安婦にされ犠牲になった朝鮮の女性たちへささげる「トラジの花」、八重山の島々を題材にした「海の子守歌」「浜木綿」、島々の祭祀(さいし)行事の中に見える切なさが感じられる「祈り」「カベールの彼方」など8曲。歌の合間、海勢頭さんはぼくとつとしたトークで会場を和ませながらも、「命は大事にしないといけない」という平和へのメッセージをしっかり伝えていた。
アンコールに応えて「初恋ミンサー」「ユー・レイズ・ミー・アップ」「月桃」の3曲も歌った。会場を後にする人たちは「素晴らしかった」「来て良かった」と口々に話していた。