今年7月に116年ぶりに復活した石垣村の組踊「伊祖の子(いずぬしー)」が11月20日、石垣市民会館(石垣市浜崎町)で上演された。
組踊は琉球王国時代から続く沖縄の伝統芸能で、歌三線(音楽)、唱え(せりふ)、舞踊で構成される歌舞劇。中国からの使者を歓迎する宴で初めて上演されたのが始まりで、主に沖縄本島で上演される。
石垣市字石垣にはかつて同組踊が演じられていたことがわかる台本が残っている。しかし記録が少なく、1895(明治28)年に宮鳥御嶽の結願祭で演じられた記述はあるが、それ以後は不明。そのため復活は116年ぶりとなる。
石垣字会は文化庁の2009年度・2010年度「ふるさと文化再興事業」の助成を受け、1年目は台本の整備、伝承者の育成、2年目には衣装と道具などの整備を行ってきた。そして7月17日、宮鳥御嶽の境内で復活上演を果たし、集まった500人を超える観客を魅了。その時見ることができなかった人たちから多くの要望が寄せられ、今回、市民会館開館25周年記念事業として再び演じられることになった。
同組踊は「雪払い(ゆちばれー)」とも言われる。士族の娘・思鶴(うみちる)は父・伊祖の子の留守中、継母の乙樽(うとぅだる)から雪の中での綛(かせ)掛けや大雪の日の庭の雪かきを言いつけられ、いじめられる。やがては「言いつけをやっていない」と言って着物をはがれ、追い出される思鶴。雪の中で倒れている所を見つけた伊祖の子は乙樽に聞き出すが、偽りの返答をしたため立腹。乙樽を斬り殺そうとしたが、思鶴と弟・亀千代(かみじゅう)の嘆願で思いとどまり、乙樽も改心して家族仲良く暮らしていくという物語。
せりふは全て沖縄の言葉。当日は舞台横のスクリーンに字幕も表示された。復活の話を聞いてこの日を楽しみにしていた観客は、演者の表情やしぐさにじっと見入り、独特の世界に引き込まれていた。家族が舞台を去るラストシーンでは万雷の拍手が送られた。
伊祖の子を演じた岡山創さんは「この組踊を字石垣だけでなく八重山の宝として残していくよう、後輩たちにも伝えていきたい」と話していた。