八重山諸島・黒島の沖合で3月8日、ダイバーがザトウクジラと対面し、ドラマチックなひとときを過ごしたという。
石垣島のダイブショップ「ダイブ・ パラッパ」は9人で黒島の南西、沖合200メートルほど、水深17メートルの白い砂地ポイントでダイビングを楽しみ、正午前に2本目のダイビングを終えようとしていた。インストラクターの佐藤千春さんは、東京から観光で来た男性2人と浮上体制に入り、水深10メートル、わずか2メートルの真横を8メートルほどのザトウクジラが通過したという。とっさに佐藤さんは水中カメラを構え、2枚の写真にを収めた。
佐藤さんは「その一瞬でいろいろなことを考えた。尾ビレにたたかれたら死んでしまう怖さと、その存在感の大きさに圧倒され、神秘的にも見えた。まさか水中の同じ空間でクジラと出合えるとは思ってもみなかったので、気がつくと水中でずっと叫んでいた」という。今まで八重山海域で1700本のダイビングをして初めての経験だと興奮を隠せない様子だ。
佐藤さんらが浮上後、すでにダイビングを終えたダイバーが海に飛び込んだが、水中では見ることができず、20分ほど船上からのホエールウオッチングを楽しんだという。
佐藤さんは「前日にもコブシメ(=コウイカ)が現れるポイントにマンタ10枚が現れ、めったに見られないコラボに興奮した。八重山の海のポテンシャルの高さには驚くばかり。多くの人にこの海の素晴らしさを伝え、いろいろな出合いがあることを知ってほしい」と話す。翌日のダイビングは遠くに見える岩などがみんなクジラに見え、「男性客も興奮冷めやらず眠れなかった」とも。
沖縄では慶良間諸島がザトウクジラのホエールウオッチングで有名だが、400キロメートル離れた八重山諸島海域は周回ルートに入らず、石垣で30年のダイビング経歴をもつベテランダイバーでも「船上からの目撃が4回だけ」という。