大手洋菓子メーカー「エーデルワイス」(神戸市)の会長・比屋根毅さんが11月11日、ホテル日航八重山(石垣市大川)で講演を行った。
比屋根さんは昭和12年、石垣市出身。15歳で単身島を飛び出し菓子職人として技を磨き、1966年同社を創業。全国に82店舗・8ブランドを展開する日本有数の洋菓子メーカーを一代で築き上げ、業界では「洋菓子界の巨匠」とも呼ばれている。
石垣市商工会の設立40周年を記念して開かれた同講演会。業界屈指の経営者に登りつめた比屋根さんの経営哲学を聞こうと、中・小企業経営者など多くの商工会関係者が駆け付けた。
講演は「人を笑顔にするものづくり」を演題に行われ、波乱万丈だったこれまでの軌跡や人・出会いを大切にする独自の人生哲学などを紹介。
本土では就職面接担当者に「日本語はしゃべれるか」とたずねられ、「沖縄人お断り」の張り紙に接するなど屈辱的な経験をしながらも、「それが現在の糧になった」と話し、同時にさまざまな局面で多くの人に助けられて来たと強調。「あの人がいなければ今はないと思える人に本当にたくさん出会った。僕ほど運のいい人生を過ごした人はいない」と話し、「ビジネスは二の次で人を大事にするということはヨーロッパで学んだ。社員は皆わが子だと思っている」として、渡欧した際には恩師への墓参りをまず行うこと、新入社員の両親には直筆で手紙を送っていることなどを話した。
比屋根さんはこのほか、創業当初自慢の菓子がまったく売れず潔く店をたたもうと全材料を使い果たして商品を無料で配ったこと、フランチャイズ展開で成功を収めていた頃、コンビニの参入を受けて主力ブランドを完全撤退したことなど、経営危機に直面した際に行った大胆な決断なども紹介し、「あの決断があったからこそ今がある」と振り返った。
講演の最後に「この島は人間の純粋さやユイマール(助け合い精神)などが残るすばらしいところ。この島に生まれたことを心から感謝しているし、僕が力になれるなら素っ裸になって力になる」と熱弁し聴衆からは熱い拍手が送られた。
同社は今年9月、県内食品製造・販売大手のオキコ(西原町)と共同出資でエーデルワイス沖縄(同)を設立。来年2月には県内初店舗となるスイーツカフェを沖縄タイムスビル1階(那覇市)に、3月にはデパートリウボウお菓子売り場(同)で贈答用菓子をメーンにした店舗をオープンする予定。マンゴーやパイナップルといった沖縄特産スイーツなど新商品の開発も考えており、数年後には石垣出店も視野に入れる。