沖縄県内の高校生が天文学研究を体験するイベント「美ら星研究体験隊(略称=美ら研)」で、参加した生徒4人が銀河系解明の大きな手がかりとなる可能性がある新しいメーザー天体を発見したと9月1日、国立天文台が発表した。
美ら研は、国立天文台が広報活動の一環として2005年から始めた事業。石垣島には同台のVERA石垣島観測局と石垣島天文台があり、日々世界的な研究が行われている。そこで施設を使い天文学者と同じ研究を体験することで、地元で行われている最先端の科学を感じてもらおうと、毎年夏、高校生を対象に開催し今回で5回目となる(2006年を除く)。
今年は8月11日~13日に実施され、八重山高校(石垣市)から8人、開邦高校(南風原町)から4人が参加。3つの班に分かれ、VERA石垣島局にある口径20メートルの電波望遠鏡を使って合計48個の天体を観測し、そのデータを解析した。観測対象は「メーザー」と呼ばれる強い電波を発する天体。
新しいメーザー天体を発見したのは、安里沙紀さん(八重高3年)、石黒愛さん(同)、波照間美紀さん(開邦高2年)、渡邊日香里さん(開邦高1年)のグループ。観測した15個のうち1個が、過去に検出された報告例のない新発見である可能性が判明。その後国立天文台が行った観測で確認され、新しいメーザー天体であることが確実となった。
美ら研での新メーザー発見はこれで3個目。だが今回は新発見にとどまらず、さらに意義ある発見となる可能性があるという。今回の天体は銀河系の中心に近い、いて座付近にある。国内4カ所の電波望遠鏡を使って銀河系の立体地図作りに取り組んでいる国立天文台では、この領域を最も重点的に観測すべき領域としており、別の天体と比較することで、例えば銀河系の中心までの距離など、銀河系の運動と構造を解明する上で極めて重要な情報を得ることができかもしれないと期待を寄せる。
同日開かれた会見で安里さんは「星が好きで去年に続いて参加したが、星を見つけることができてうれしかった」、石黒さんは「きれいな星空が見られる環境であることがわかった。地元の高校生がもっと参加すれば、未来にもつながると思う」、波照間さんは「去年は見つけられなかったが、今年は見つかってうれしい。天文学に興味が沸いた」、渡邊さんは「普通ではできない、初めてで新しい体験ができてよかった」と、それぞれ喜びを表した。
今回の成果は、2011年3月に筑波大学(茨城県)で開催される日本天文学会春季大会のジュニアセッションで発表される予定。