琉球大学附属図書館の貴重書展「文献資料にみる 八重山・琉球」(主催=琉球大学附属図書館、共催=石垣市立図書館)が10月22日、石垣市立図書館(石垣市浜崎町)で始まった。
同展は、琉球大学図書館が所蔵し通常一般公開が難しい貴重資料を年に一度公開するもの。資料はデジタルアーカイブを利用すれば閲覧できるが、県民に現物を見てもらおうと2001年度から県内の公共図書館と連携。各地域に関連する貴重書の展示会を行っている。11回目となる本年度は開催場所を広げようと離島開催を企画。「宮良殿内(みやらどぅんち)文庫」の里である八重山で「里帰り展」を開催したいと同館へ打診し、今回の展示会を実現させた。
「宮良殿内文庫」は代々八重山の頭職(かしらしょく)を務めた宮良家に伝来した文書類で、「これまで継承してきた資料を後学のために役立ててほしい」と10代当主・故宮良當智氏が1962(昭和37)年に300点余りを同大図書館に寄贈した。資料の範囲は明和大津波(1771年)から明治処分(1879年)前後までで、琉球王国時代の八重山の政治社会的動向や多彩な日常が記されている。
会場には、19世紀八重山の重要行政文書の集成といわれる「萬書付集(よろずかきつけしゅう)」や近世八重山の祭祀(さいし)に関する事項がまとめられた「八重山嶽々由来記(やえやまたけだけゆらいき)」、1801年に八重山へ漂着した福建省泉州府の船の経過報告書「漂流唐船救助礼状(ひょうりゅうとうせんきゅうじょれいじょう)」やペリーの日本遠征中に起きた駐留兵殺人事件の犯人に対する八重山流刑送り状「八重山嶋江一世流刑手形(やえやまじまへいっせいるけいてがた)」、八重山古典音楽の楽譜「八重山工工四(やえやまくんくんしー)」などが展示され、訪れた市民は古文書の前で興味深そうに見入っている。
このほか市立八重山博物館所蔵で明和津波の被害状況を王府に報告したと思われる「大波之時各村之形行書(おおなみのときかくむらのなりゆきしょ)」や沖縄方言研究に大きな業績を残した仲宗根政善氏の「八重山方言調査ノート」など八重山に関する資料29点と写真パネルコーナーがあり、石垣市出身の中国哲学研究者・大濱晧氏の資料、與那國島象形文字なども展示する。
同大付属図書館情報サービス課沖縄資料担当の冨田千夏さんは「沖縄戦で多くの資料が焼失した沖縄本島とは異なり、八重山には貴重な資料が豊富にある」と話す。「喜びの声をたくさん聞くことができ、ここで開催して良かったと感じる。展示している戦後八重山の写真に関する情報を地元の方から聞けるなど、自分自身も勉強になる」とも。
開催時間は10時~19時(土曜・日曜は17時まで)。今月30日まで。