石垣市健康福祉センターで2月5日、「新メニュー料理講習会及び八重山食文化シンポジウム」が開かれ、八重山の食材や活用法について知識を深めた。主催は八重山食文化推進協議会。
同協議会は沖縄食文化推進協議会の八重山地区として昨年発足。沖縄方言のぬちぐすい(命薬)とゆくい(休息するの意)を合わせた造語「ぬちゆくい」をコンセプトに、八重山特有の食材を使った新しい料理の開発と、地域に根差した食文化を推進する「八重山ぬちゆくいプロジェクト」に取り組んでいる。
料理講習会では健康に配慮した処理法を用いた「中身汁」、ウコンやピパーチ(島こしょう)を使った「コーズーシー(炊き込みご飯)」、石垣黒鶏をスープにオオタニワタリなど島の野菜をふんだんに使った「八重山ちゃんぽん」の3品を調理。講演では八重山の食材を使った「石垣島ラー油」をヒットさせた辺銀暁峰さんが演台に立ち、「常に島の人に食材を教わったり、離島へ海藻を採りに行ったりして島の生活を楽しんでいる。食材に新発見があると創作意欲が湧く。今後も新商品の開発や沖縄の音楽、アートを発信するなど島おこしをしていきたい」と話した。
シンポジウムでは同協議会の前津栄信会長やJAおきなわ八重山地区本部八重山地区営農振興センター長の田村秀光さんら7人が「八重山の食文化」について意見を出し合った。
前津会長は「昔は近くに医者がいなかったので庭にある草木を食べたり薬草を患部に塗布したりして育った。医食同源、身土不二、一物全体などの古くからの八重山の食への意識を大切にするべき」、田村さんは「ピパーツは牛の臭い消しに、肉を柔らかくするにはパパイアやサトウキビを…と、先人の知恵で八重山ならではの調理法がおいしい食を継承してきた。JAとしてもこういう取り組みを応援したい」と昔ながらの食材の生かし方を紹介。元市職員の黒島さんは「協議会が作成を予定しているレシピ教本を配布すれば、素晴らしい食材が継承発展されるはず」と期待を寄せた。
石垣島ハーブスクール代表の嵩西洋子さんは「この土地の風土全体をひっくるめて八重山料理。わざわざ買わなくても庭で摘んできた葉っぱでお茶になる。農業は胃袋に代わる畑」と八重山の自然がそのままぜいたくな食になることを強調。市内の飲食店でシェフを務める近藤武さん、佐藤陽介さんは「全国的に食文化が乱れている。前に走るだけでなく、忘れかけてきたものがたくさんあるのでは。その中で沖縄には感謝の心がある。そのことが栄養を与えてくれていると思う」「食材は合わせることでおいしくなる。例えイタリア料理でも島でしかできない味ができあがる」とそれぞれ指摘した。
参加した西表在住の40代女性は「中身汁が丁寧な下ごしらえでこんなに味が変わるのかと驚いた」と感心した様子で話し、茨城県から一時滞在中の女性は「長生きしたいから今日は夫婦で参加した。ここではアオサを採りに行ったりして外で食材を手に入れることもある。八重山には魅力がたくさんある」とうれしそうに八重山の食材について話した。市内在住の30代女性は「食べることに興味はあったが、講演を通して、こうしてまちおこしができるのかと勉強になった」と感想を話した。
協議会では八重山産食材を利用した創作料理の開発やもてなしなど5つの「ぬちゆくいマインド」に合った11店を「ぬちゆくい店舗」として認定。推奨店はプロジェクトのマークであるピパーツの葉と実をモチーフにしたステッカーを表示し周知を図っていく。