「全国に誇れる沖縄の医療を守ろう 地域医療シンポジウム」が5月26日、ANAインターコンチネンタル石垣リゾートで開かれた。主催は「沖縄の地域医療を守る対策本部」。
深刻化する医師不足や厳しい経営状況など、多くの課題に直面する八重山の地域医療の今後の在り方について議論することが目的。会場には約200人の市民が詰め掛け、講演やパネルディスカッションに聞き入った。
シンポジウムでは坂出市立病院(香川)や徳島県立病院の経営改善を手掛けてきた塩谷泰一さん(高松市病院事業管理者)が、「自治体病院はどこへいく」と題して基調講演を行った。
塩谷さんは全国の自治体病院が医師不足や赤字経営により医療崩壊の危機にひんしている実態を説明。自治体病院議論の大前提が「赤字」であることを疑問視し、「投下された資本が目的として掲げられた医療政策の実現にいかに寄与したかを評価するべきだ。税が投入されている自治体病院と税金を支払っている民間病院の医療の違いを認識しなくてはならない」と自治体病院の民間移譲・公設民営化が簡単に決定されていることに危機感を示した。その上で「医療とはそこで暮らす人々が日々の生活の中で共に作り上げる大切な文化。住民・行政・病院が一体となって取り組むことが最も大切なことであり、文化の担い手としての住民には行動を起こしていく責任がある」と住民自らも医療問題に参画することが不可欠であることを力説した。
講演に続き「安心できる地域医療体制をめざして」をテーマに、元八重山病院院長の大浜長照さんらを加えてパネルディスカッションも行われた。
大浜さんは「八重山は全国平均よりはるかに早い救急隊や拒否の無い医療など地域医療が確保されている状態。八重山病院がひとたび独法化されてしまうと医療がビジネスとなり、八重山の医療が崩壊してしまう。離島医療を充実させるためには県が主体となって取り組むべき」と独法化への動きに異を唱(とな)え、八重山の医療問題の改善策をいくつか挙げた。フリーライターの山城紀子さんは「患者主体で断らない風土があることなど、実は沖縄県には他県より優れた医療があることを認識すべき。この優れた公的医療を当たり前と思わず、なぜ守らねばならないか今後も皆さんと考えていきたい」と訴えた。今年5月に出産したばかりという石垣市在住の天願由子さんも参加し、「産科医不足の問題に直面するまで地域医療について考えたことがなかった。私たちが生活していく中で欠かせない医療を住民も真剣に考え、行政も安心して暮らせるまちづくりをしてもらいたい」と思いを込めた。