石垣市健康福祉センター(石垣市登野城)で1月19日、「気候講演会」が開かれた。石垣島地方気象台、石垣市、石垣市教育委員会、沖縄県八重山事務所の共催。
会の冒頭、同気象台長の中川慎治さんは「環境問題は台風や津波などのように直ちに現れにくいが、現れてから対策を取ったのでは遅い。グローバル・ローカル両視点からの本講演で、皆さんにもあらためて気候について考えてもらう機会になれば」とあいさつ。
気象庁の環境気象管理官付全球大気監視調整官の小出寛さんが「世界の温室効果ガス増加と地球温暖化~私たちの自然環境のこれまでとこれから~」と題して講演を行った。小出さんは、二酸化炭素などの温室効果ガス濃度が、工業化以降世界中で急激な変化がみられることを指摘。石垣島や日本周辺、世界全体を見ても海面水面が長期的に上昇傾向にあり、21世紀末の世界の平均気温は20世紀末に比べ1.1~6.6度上昇すると予測。その結果、大雨の発生頻度が増え、台風も全体数は減るが強度を増したものが増加し、経路が東へ偏る可能性があることなどを示唆した。その上で、地球温暖化の観測・適応策・緩和策は相互に密接に関連しており、その対策には自然科学と社会科学の学際的な知見が必要であると説いた。最後に、「地球温暖化について正しく理解した上で、どのように行動したらよいか判断することが大切」と締めくくった。
続いて、環境省那覇自然環境事務所の自然保護官平野淳さんが「八重山のサンゴ礁とその保全対策」と題して講演。八重山諸島に位置する日本最大規模のサンゴ礁海域「石西礁湖(せきせいしょうこ)」の現状や、温暖化などで誘発されるサンゴ礁の生態系衰退などを解説した上で、サンゴ礁の海は防波堤機能や観光資源など周辺環境に多くの利益をもたらしており、その経済効果は石垣市の年間予算の12倍以上に上ることを説明した。サンゴ礁保全活動は、現在官民一体となってさまざまな取り組みが行われていることも紹介し、「効果が見えにくい部分ではあるが、普段の生活の中でちょっと省エネすると、実はその行為はサンゴが死んでいくのを食い止めているんだと思い、身近な部分で対策していただければ」と話した。
講演の最後には質疑応答があり、「なぜ海域ごとに海温差があるのか」「二酸化炭素以外の温室効果ガスも増えているのか」「移動するサンゴはあるのか」「サンゴ礁の変化と漁獲量の変化は関係があるのか」などの多数の質問が挙がり、市民の関心の高さがうかがえた。