「石垣島の自然ガイド講座・アンパルの自然と人文ガイド編」開講記念講演会が9月18日、大濱信泉記念館(石垣市登野城)で開かれた。主催は「アンパルの自然を守る会」で、参加者は50人を超え、市民の関心の高さがうかがえた。
八重山商工高校、生物部顧問の藤本治彦教諭は、日本最大のシレナシジミの研究について報告した
目的は、2005年11月にラムサール条約登録湿地になった「名蔵アンパル」の自然と環境を理解したガイドの育成。アンパルの多様な自然を解説するだけでなく、危機にあることを認識したガイド育成を目指す。島村賢正共同代表は「新空港開港で観光客が増加する中、『保全と賢明な利用』を踏まえたガイドを心掛けてほしい」とあいさつ。
講演では3人の講師がそれぞれの視点からアンパルに関する調査結果を発表した。八重山商工高校、生物部顧問の藤本治彦教諭は、日本最大のシレナシジミの研究について報告した。藤本さんは「今までシジミは動くことがないといわれていたが、成長に伴い、500メートル上流に移動することが分わってきた。まだまだ未知の部分もあり、稚貝がどこにいるか分かっていない。その種の生活史が分からないと保全は難しい。今後もシジミの研究を通してアンパルの保全を提案したい」と話した。
「石垣青少年の家」の小菅丈治さんは、ベトナムのチートゥイー干潟とアンパルの寄生共生関係に関わる生物の種類を比較。貝やホシムシに寄生するカニの種類などを数え、アンパルの生物多様性を証明した。「独特の島の地形により、内湾の泥っぽい環境と、潮通しのよい砂干潟がコンパクトに存在することによって多様性を生み出している。良きガイドとは、観察を終えた時に客の心が豊かになっていること」と結んだ。
サトウキビ農業に携わる干川明さんは、サトウキビ収穫後に無耕作で次の株を出す「株出し栽培」と、一度整地しあらためて株を植える「新植(しんしょく)栽培」の赤土流出を比較した。大雨時に畑から流れ出る水の色を撮影した動画を紹介、株出し栽培の畑から排出される水は澄んでいるが、新植栽培は赤土を多く含んだにごった水であることは明らかで、参加者の関心を誘った。また、サトウキビ畑だけでなく、パイナップル畑からの赤土流出を問題提起し、今後の対策を訴えた。
今後、同会は月に1度の割合で「アンパルガイド講座」を開き、自然史、民俗、カニ、野鳥、植物、古代史などを座学や現場学習で学ぶ場を設ける。詳しくはホームページで。