「八重山の医療を守り育てる講演会とフォーラム」が9月12日、石垣市健康福祉センター(石垣市登野城)で開かれ、市民や行政、医療関係者ら約80人が参加した。
はじめに、丹波新聞社編集部記者の足立智和さんが「地域が守る医療~兵庫県丹波地域の取り組み~」と題して講演。経営難と医師不足に陥った兵庫県立柏原病院の事例を紹介した。同病院は、医療崩壊となる根本の問題を見据えた地域住民が「守る会」を結成し、「子どもを守ろう、過酷な勤務実態の医師を守ろう」と住民側から働きかけ、困窮した状況から立ち直っている。
そうした中、足立さんは「日本の医療は過酷な勤務実態の中で耐える医師の善意のみで成り立ってきた。助ける側の人間が助けられる人のためにこんなに苦しめられていいのかと、世の中の不条理に違和感を覚え、これをどうにかしたいと思った」と問題意識を持った経緯を振り返り、海外に比べ少ない医師数や不当な責任転嫁(助けられなかった場合の告訴)など、日本の医療現場における問題点を提示。その上で、「病院側の頑張りだけではどうにもならない。地域医療を作るのは私たち地域住民」と提言し、丹波地域における住民の具体的な取り組みなどを紹介した。
続くパネルディスカッションでは、中山義隆石垣市長、川満栄長竹富町長、八重山地区医師会の上原秀政会長、県立八重山病院の松本廣嗣院長、石垣市女性団体ネットワーク会議の唐真佑子さんがパネリストとして登壇し、それぞれの立場における八重山の医療の現状と課題を報告。夜間診療所の再開、離島のドクターヘリ導入と人材確保、保健と医療の連携、地元からの医療従事者輩出の取り組みなどについて議論し、共通認識を新たにした。コーディネーターを務めた八重山の医療を守る郡民の会副会長の當山房子さんは「地域を守る医療は住民が主体。医療・住民・行政がそれぞれの取り組みを行っているが、一方だけの努力ではなく協力していくのが必要と感じた」とまとめ、締めくくった。
聴講に来ていた医療関係に従事する50代女性は「医療従事者と医療を受ける側のズレというのはある。特に医者は人間である前に人を救うのが当たり前のように思われてしまうので、自分こそ病院に行くべき時でも人を診察しているのに非難されることの方が多い。今回の講演は地域住民にこそ聞いてほしい」と話した。30代男性は「外科手術などは島だと不安なので島外で行った方がいいと思っていたが、それをすると地域医療が崩壊すると聞いて驚いた。今まで八重山病院の経営責任は病院側にあると思っていたが、僕たちもその責任があったのかとハッとした」と話していた。