石垣島の砂浜で7月8日、アカウミガメがふ化し、近くのホテルの宿泊客らが海に向かう様子を観察して歓声を上げた。
ふ化の兆候を知ったのは石垣島ウミガメ研究会の石垣隆さん・隆和さん親子。2人は20年以上前から、カメの観察・研究を続けている。
「通常は産卵からふ化まで70日前後かかるが、48日でふ化した。台風が接近しているのを感じ、早めに出てきたのかもしれない」と隆さん。
カメは砂の温度が下がるほぼ日没時に砂の中から顔を出したが、まだ明るいと知ってかしばらく動かなかった。日が落ちると、十数頭が次から次へと砂の中から姿を現し、懸命に海に向かって歩き出した。
隆さんがカメのふ化を確認し、近くのホテルに呼び掛けるとサンセットなどを楽しんでいた宿泊客約30人が足を運び、目の前に繰り広げられるありのままの自然に目を奪われた。子どもたちは「頑張れ、頑張れ」と声を掛けてカメを見守り、「もう少しで海だよ」「意外に早く砂浜を歩ける」「何でふ化してすぐに泳げるのだろう」などと感想を口にした。
隆さんは「ほとんどのカメは親になる前に食べられるなどして死んでしまう。このような形で多くの人の目に焼き付けてもらえればうれしい」という。
東京から観光で来た女性は「たまたま夕日を見ていたら声を掛けていただいて、カメがふ化するのを初めて見ることができた。子どもにこの瞬間を見せてあげることができ、命の大切さを教えることができた」。大阪から来た女性2人組は「貴重なシーンに遭遇できた。頑張って生き延びてほしい」と、それぞれ感想を話した。
隆さんは「この周辺の砂浜は車が走ることがある。産卵した卵の上を車が走るとふ化しなくなる可能性があるので、毎日砂浜を巡回し、場合によっては卵を安全な場所に移動する作業を続けている。砂浜を車で走るのは気持ちいいかもしれないが、やめてほしい」とドライバーに呼び掛けた。
ふ化の様子は動画で撮影し、ユーチューブにアップしている。