旧暦5月4日に航海安全と豊漁を祈願する伝統行事「海神祭(ハーリー)」が5月29日、八重山各地で開催された。石垣島では3カ所、小浜島・西表島・与那国島の計6カ所。
石垣島北部漁友会主催のフナクヤ(船越屋)ハーリーは、今年で20回目となる記念に、初めて東の浜で御願ハーリーの後、船を担いで西の浜(伊原間漁港)に移動するフナクヤを行った。
平久保半島の付け根に位置する伊原間は、東の浜から西の浜までおよそ200メートルという狭隘な地形になっていて、古くから漁業者は、東の浜が悪天候の時はくり船を担いで西の浜に移動して、漁や運搬を行っていた。これを再現して「フナー、クヤー」の掛け声とともに島の東から西側の港までハーリー船を担いで越えるのがフナクヤ海神祭の特徴で、地域の伝統を残したいと20年前に平良正吉さん・八重子さん夫婦が発起人となり、航海安全を祈願する第1回のフナクヤハーリーを行った。
平良八重子さんは「ハーリーがきっかけで埼玉の人たちとの交流が始まったり、伊原間中や明石小・伊原間保育所の子どもたちもいつも参加してくれるのでうれしい。今年初めて御願ハーリーを東の浜でやったが、海況が悪かった。それを担いで西の浜に来たら海が穏やかという状況で、子どもたちにもフナクヤの意味や海は大変なところだと体感してもらえたのではないか」と話す。
平良正吉さんは「はじめの頃は大変だったが、漁師に限らず海を利用して生活している若い人たちが中心となって動いてくれて20回目を迎えることができた。地域の伝統を子どもたちに伝えていくいい機会になっている」と話した。
フナクヤハーリーではそのほか、体験ハーリー・団体ハーリー・五勇士ハーリーが行われ最後の上りハーリーでは桃里漁友会と北部漁友会が対戦し、北部漁友会が勝利した。会場では、マグロダシとエビダシの汁そばの振る舞いや、崎枝の漁師から寄贈されたというマグロの解体ショーも行われた。
北部漁友会の丸山秀貴会長は「子どもたちや地域の方々の参加も多く、想像以上に大盛況になってよかった。東の浜から船を担ぐのは大変だったが、頑張ってよかった」と振り返る。
石垣漁港では第111回の石垣市爬龍船(はりゅうせん)競漕(きょうそう)大会が行われ、御願ハーリー・転覆ハーリー・上りハーリーのほか、団体ハーリー・マドンナハーリーなども行われた。上りハーリーでは、中西組合同チーム代表の中二組が東一組・東二組を制し5連覇となった。