日本最大のサンゴ礁海域である石垣島の石西礁湖(せきせいしょうこ)で5月30日の午後9時30分ごろ、サンゴ(ミドリイシ類)の一斉産卵が確認された。
ピンク色のバンドル(精子と卵子が入ったカプセル)を持つサンゴ個体の拡大写真
鮮やかなピンク色の卵たちが無数に海中を漂い、神秘的な光景に包まれた。2016年に世界各地で起こったサンゴ礁の大規模白化現象で石西礁湖のサンゴも70.1パーセントが白化・死滅したが、これを生き残ったサンゴや白化現象以降に育ったサンゴたちが再生を始めているようだ。
一斉産卵が行われた当日は満月の夜だった。産卵を確認した世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)が運営するサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」のセンター長・鈴木倫太朗さんは「卵がポリプ(サンゴの本体)からゆっくりと顔を出し海中を浮遊し始めた。次の命を繋ごうとする姿に感動した」と話す。
石西礁湖は石垣島~西表島間の東西20キロに広がり、350種類以上のサンゴが生息している。同海域での産卵は5月~9月ごろに行われ、種類や場所によって時期が異なるという。倫太朗さんは「しらほサンゴ村センターとしてサンゴの保全に貢献している企業や農家の方を認定する制度を設ける。サンゴの井戸や塀、雑貨などサンゴ礁文化が根付く石垣島で地域づくりに関わりながら保全活動を進めていく」と話す。
2016年に地球上で最も大きなサンゴ礁のひとつであるオーストラリアのグレート・バリア・リーフで大規模なサンゴ礁白化現象が起こった。これを始めに世界各地のサンゴ礁で死滅が続き、石垣島の海でも多くのサンゴが失われた。現在は回復傾向にあるとみられるが、今後琉球列島全体のサンゴ保全を進めていくため、WWFジャパンなどの環境保全団体は活動に注力していく考えだ。