サンゴ礁を代表する「チョウチョウウオ」の仲間には、餌となるサンゴの種類を選択して食べる魚種がいることが水産研究・教育機構水産技術研究所の研究で明らかになった。地球温暖化による海水温上昇で白化現象を起こしやすい特定のサンゴを好んで食べる魚種もおり、サンゴ多様性がチョウチョウウオ生息数に影響を与えることが考えられる。同研究は科学研究費補助金および環境研究総合推進費で実施。オープンジャーナル誌「PeerJ」に8月4日付で掲載された。
12タイプに分けたサンゴ(画像提供=国立研究開発法人 水産研究・教育機構水産技術研究所 八重山庁舎)
美しい見た目でダイビングや鑑賞用としても人気のチョウチョウウオには、サンゴのポリプ(柔らかい部分)を食べる種類がいるが、餌として好むサンゴの種類は特定されていなかった。同研究ではこの点に着目し、八重山諸島において7種類のチョウチョウウオ(各22~28個体)の仲間が12タイプに分けたどのサンゴを好んで食べるかを調査。ヤリカタギ、ハナグロチョウチョウウオ、ミカドチョウチョウウオ、ミスジチョウチョウウオ、ウミヅキチョウチョウウオ、シチセンチョウチョウウオ、スミツキトノサマダイの行動を観察した。その結果、4タイプのサンゴが7種のチョウチョウウオから好まれ、そのうち白化現象で死にしやすいテーブル状ミドリイシと散房花状ミドリイシの2タイプがヤリカタギ、ハナグロチョウチョウウオ、ミカドチョウチョウウオの3種から好まれた。特にヤリカタギについては、白化現象で死にやすいこの2タイプのサンゴだけを好んだ。
国際自然保護連合によると、ヤリカタギの生息数は近年減少傾向にある。「準絶滅危惧種」と判定されており、地球温暖化によるサンゴ白化現象で生息数減少が危惧される。一方で、白化耐性の強いサンゴを好んだ残りの4種についても、海水温上昇が続けばサンゴの死亡リスクを高めてしまうため、生息数に影響受ける可能性がある。今回の研究結果は、サンゴ礁に生息する生物多様性を守るためには、さまざまな種類のサンゴを保全・再生する必要があることを示唆する。