台湾の対中交渉窓口機関である「海峡交流基金会」董事長(理事長)の江丙坤(こう・へいこん)さんが5月31日、石垣市内のホテルで講演した。主催は八重山経済人会議。
江理事長は台湾南投県出身。台湾省立法商学院(現在の国立北京大学)を卒業後、東京大学に留学し農業経済学博士を取得。駐日大使館、駐南アフリカ大使館の勤務を経て1982年から経済部の要職を歴任。2008年に海峡交流基金会董事長に就任後、中国側との交渉に当たり、週末直行チャーター便運航と中国からの台湾観光解禁、両岸の三通(通信、通商、通航の直接開放)合意など、対中政策を数々実現している。石垣市で講演するのは1998年以来2回目で、当日は約200人の聴衆が集まった。
当日は「台湾・中国の新たな関係に八重山地域はどうコミットできるか」をテーマに講演。江理事長は世界における中国の台頭、大きく変化した中国と台湾の関係について説明しながら「八重山あるいは沖縄全体を考える時、両岸(中台)関係に着目しなければならない」と述べ、八重山の経済発展への道筋として5項目を示した。
「最も重要なのは交通」としてまず挙げたのは、「台北松山空港と石垣空港、那覇空港を結ぶ直行便運航」。現在、石垣空港からは台湾東岸の花蓮空港へ直行便が飛んでいるが、台湾最大の都市にあり、中国各都市へ直行便が運航している台北松山空港を利用できるようになれば、地理的有利性を生かせると提言した。
さらに、「台湾を訪れる中国人観光客の誘致」「中国の事情に詳しい台湾企業と合弁、提携による中国市場への進出」「中国市場向けの生産、輸出産業の開発」「台湾と沖縄のシンクタンクで創設した『台湾・沖縄フォーラム』の活用」を提案した江理事長は「わたしは中台関係に携わってきたが、日本との関係強化への取り組みも実行したいと考えている。一緒に努力していこう」と述べた。
滞在中、石垣島と西表島を観光。講演会の翌日に開いた記者会見では、「この地域は観光・サービス産業が大事であることを改めて感じた。莫大な人口を持ち、所得が向上していく中国にどう八重山訪問のチャンスを与えるか、旅行が好きな台湾の人々をどう導くか研究すべき」と述べ、長期滞在型リゾート、ゴルフ場、温泉、「世界一安く安心な」免税店の整備などをアイデアとして挙げた。
「台湾で八重山のプロモーションを活発に行うことが大事。人と人との交流ができれば、そこに商売や投資の話も生まれるだろう」とも。