「地震・津波対策講演会~東日本大震災の教訓と八重山の示唆~」が3月29日、石垣市民会館(石垣市浜崎町)で開かれ、備えの大切さを訴えた。主催は内閣府沖縄総合事務局石垣港湾事務所。
講師は、みなと総合研究財団主席研究員の宮本卓次郎さんと琉球大学理学部物質地球科学科准教授の中村衛さんの2人。会場には防災担当者や建設、港湾関係者など200人以上が訪れた。
宮本さんは震災当時、国土交通省東北地方整備局副局長として仙台市内で勤務。被災地に車が行けるよう、いち早く救援ルート確保に動いたり、通信機器を被害市町村に設置してホットラインをつないだりするなど復旧・復興の指揮を執った経験を交えて講演した。
津波で壊れた防波堤の写真を見せて「津波の到達を遅らせるなどそれなりに役割を果たしたと思うが、形あるものはいつか壊れる」と宮本さん。「公共施設は丈夫に造るべき。すぐに『無駄』と言う人もいるが、ただお金をかけるのとは違う。救命・復興の拠点となり、住民の命を守る役割があることを知ってもらいたい」と訴えた。
災害を想定して「BCP」(=Buisiness Continuity Plan、事業継続計画)を作成し、事前準備をすることの重要性も強調。「災害による被害はさまざまな現象が連鎖することによって起きる。その連鎖をどうやって断ち切るか、そこが対策であり、生き残る術がある」と話し、学校での防災教育の大切さも訴えた。
最後に宮本さんは「離島という立地から、東北の事象が全ては当てはまらないだろう。だが自分たちなりにできる準備をすれば結果は変わってくるはず。ぜひ考えてもらいたい」と説いた。
中村さんは1771年に八重山を襲った明和大津波の解説しながら、「沖縄は地震が少ないと思われがちだが、実は地震が多く、将来強い揺れにあう可能性は東京と変わらないと言われている」こと、さまざまなデータを使って提示。
今後予想される津波については、「発生から10分程度で津波が到達し、場所によって遡上高は10メートル以上」と説明。「島の反対側まで波が回り込むので全域が被害を受けることを想定すべき。避難時間が短いので、避難できる範囲や場所などそれぞれが最善の手を考えておくことが必要」と話した。
訪れた人たちはじっと話に聞き入り、災害への備えをあらためて考えていた様子だった。