日本海難防止協会(東京都港区)は11月3日、沖縄県竹富町にある鳩間島で世界初の「車両移動式油化装置」の公開実験を行った。実験は日本財団(東京都港区)の助成を受けたもの。
船舶の航行安全や海洋汚染の防止を目的に調査研究などを行っている同協会は、昨年、海岸の漂着ゴミをエネルギーに変えて有効活用する「宝の島プロジェクト」を企画。そのモデル事業として、漂着する発泡スチロールを固定式油化装置でスチレン油に変換する国内初の試みを同11月に鳩間島でスタートさせている。
今回、同じ処理能力を持ちながら車両に搭載できるほどの小型化に成功。約5トンある固定式が約2トンになり、4トントラックがあれば運ぶことができる。海岸を移動しながらゴミを回収・処理したり周辺離島へ持っていったりすることも可能で、同協会は低コストで効率的なゴミ処理ができると期待する。
当日は、関係者をはじめプロジェクトをきっかけに発足したNPO法人「南の島々(ふるさと)守り隊」のメンバーや鳩間小中学校の児童生徒、対岸にある西表島でエコ活動に取り組む西表ヤマネコクラブの小学生らが参加。海岸で発泡スチロールを回収した後、お披露目式やデモンストレーション、抽出したスチレン油を燃料にした発電実験でかき氷や綿菓子を作って無料配布した。
同装置は1時間当たり10キロ分を処理でき、約6リットルのスチレン油を取り出せる。スチレン油はボイラーや焼却炉の燃料として灯油やA重油の代用になるほか、軽油を混ぜることでディーゼルエンジンでも使うこともできる。
鳩間島は周囲4キロ、人口50人の小さな島。固定式を使って月1回約20リットルのスチレン油を生成しているが、地域活性化につながる有効活用法についてまだまだ模索中。同NPO理事長の浦崎金雄さんは「ホテルや店舗で使ってもらうなど普及活動が必要」と話し、鳩間小学校4年の本間康太郎くんは「この小さな島での取り組みが日本中、世界中に広がってくれたらうれしい」とさまざまな夢を描く。
同協会研究統括本部部長・主席研究員の大貫伸さんは「漂着ゴミは社会のひずみが生んだもの。だがそのゴミこそが離島を宝の島にすると思っている。今後は八重山、対馬、佐渡島を中心とした3地域でプロジェクトを展開していきたい。その時は鳩間島の皆さんにも手伝ってもらいたい」と期待を寄せる。