八重山博物館(石垣市登野城、TEL 0980-82-4712)で現在、企画展「八重山の建築」が開かれている。
会場では、八重山の先人が自然と風土の中でどのような住まいに暮らし、家造りに関する知恵や工夫を継承し建築技術を発展させてきたのかがわかるように、大工道具や建材、模型、古文書などを一堂に展示している。
八重山の住居の形態は12世紀ごろ、岩陰や洞窟から、平地に掘立柱式の木材の家屋に移行し、1696年には蔵元が瓦ぶきを採用した。1904(明治37)年には、かやぶき家屋80%、瓦ぶき家屋が20%の比率だったという。
展示で目を引くのは、漢那用恭さんによる2メートル四方もの士族の邸宅模型。元大工棟梁(とうりょう)の漢那さんは現役引退後、八重山の建築様式を後世に伝えたいと多くの建築模型を各所に提供してきた。100年以上前の建造物を10分の1に縮尺した模型は、屋根の一部を透明にし、屋根裏の梁(はり)を見せるなどの工夫を施している。
屋根の一番高い位置に使われる棟木には、中国から沖縄本島を経て伝わった「天官賜福紫微らん駕(てんかんしふくしびらんが)」という除災招福(じょさいしょうふく=災いを取り除いて福を招く)の言葉が記され、中国の文化が生活の一部に残る様子がうかがえる。
そのほか、見えない部分に重要な加工が施され、高度な技術を用いた形跡も見られる、イタバギィ(板びき)という2人で掛け声を掛けて使う大のこぎりの展示、各地の御嶽(うたき=聖地)や権現堂神殿に見られる細部装飾の説明も。
宮良信世館長は「身近な歴史的構造物に対する関心をより強くしていただければ」と来館を呼び掛ける。
開館時間は9時~17時。月曜休館。企画展は無料。10月7日まで。