石垣島天文台が12月8日、黒く塗装した人工衛星は塗装のない場合と比べて太陽光の反射量を半減させる効果があるとして検証した研究成果を公式ウェブサイトで発表した。
スターリンク衛星の飛跡と周辺の星の3色(緑、赤、近赤外)擬似カラー合成画像(提供=NAOJ)
観測に使った「むりかぶし望遠鏡」は九州・沖縄地方最大の光学望遠鏡(口径105センチ)。天体の明るさを3つの色(波長帯)で同時に測定することができる特性は、同じ条件で取得した複数の色の情報を使って、人工衛星の明るさを高い精度で把握することを可能にするという。石垣島天文台の堀内貴史特任研究員ら研究チームは4月から6月にかけて、アメリカのスペースX社が開発したスターリンク衛星の通常の機体と光害軽減を目的に黒色塗装が施された機体「ダークサット」を対象に調査。その結果、ダークサットは太陽光の表面の反射率を約半分に抑え、さらに塗装の有無に関わらず長い波長ほど明るく見える傾向があることを世界で初めて明らかにした。
スターリンク衛星はインターネットサービスの提供を目的に2019年5月に60機が打ち上げられ、2020年中頃までに総計4万2000機の運用が予定されている。これについて世界の天文学研究者らで組織される国際天文学連合は2019年6月、スターリンク衛星等の巨大衛星群による天文観測への懸念を表明し、日本の国立天文台(NAOJ)も同年7月に声明を出した。
堀内さんは「今回の研究は国立天文台周波数資源保護室の大石雅寿特任教授からの提案で始まった。衛星の移動速度はとても早いため望遠鏡で追うことは難しい。あらかじめ地点を定めて、ある時刻にカメラを向ける待ち受け観測という方法を用いた。一瞬のタイミングを捉えるのに苦労した」と振り返る。