生き物のトークカフェ「南西諸島の生きものたちの未来~人による利用と影響~」と題した意見交換会が6月8日夜、環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター(石垣市八島町)で開かれた。主催は世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)。
南西諸島に生息している野生生物には、国際自然保護連合(IUCN)が発表する「絶滅の恐れのある種のレッドリスト」に挙げられている種も多く、同会はこれらの野生生物との共存について専門家や市民を交えた意見交換の場として提供された。地元高校生や沖縄本島から来た小学生も参加し、お茶や菓子などを食べながら大学教授や環境保護団体による講演やトークセッションを行った。
WWFジャパンが5月23日に発表した報告書「南西諸島固有の両生類・爬虫(はちゅう)類のペット取引」によると、南西諸島固有の両生類・爬虫類の67種・亜種のうち約半数が国内外の市場で活発に取引されているという。違法捕獲による市場での取引の背景には希少な野生生物への大きな需要があり、さらにはペットとして飼育されていた動植物が別環境で繁殖することによって現地の野生生物へ影響を与えることも問題となっている。会場では「ヤエヤマセマルハコガメ」「サキシマカナヘビ」など学名に固有の地名が付くと人気が高くなるという指摘や、2015年に制定された石垣市自然環境保全条例で保全種の保護地区が指定されたことについて、制度の形骸化を避けるために違法捕獲防止のパトロール強化やさらなる区域指定の明確化を進めるべきだとの声も上がった。
兵庫県立大学自然・環境学研究所の太田英利教授は、自然環境の変質による種の固有性への影響について問題を提起。「琉球列島の島嶼性は多くの貴重な固有生物を生み出している。しかし、外来種が生態系を変えたり、野生生物が外部へ流出して雑種化したりすることによって純系の固有種が喪失してしまう」と説明した。八重山の自然環境保全活動を行う任意団体「八重山ネイチャーエージェンシー」の高木拓之会長は「外来種対策は初動対応が大事だが、実害が出てからの対策になりがち。民間での対応には限界があるので自治体や地域の方々と協力したい」と話した。
トークセッションでは「沖縄でゴーヤーなどの農作物に被害を与えた外来種のウリミバエの根絶に成功した例もあるので外来種根絶は不可能ではない」「人間活動がもたらした結果なのに人間の都合で殺すのはかわいそう」などさまざまな意見が交わされ、参加した高校生は「八重山に特殊な生き物が多く、それがペット取引されていることを初めて知った」と感想を述べた。
太田教授によると、西表島に生息し絶滅が危惧されている国の天然記念物「イリオモテヤマネコ」の主な餌はほとんどが両生類だが、これはヤマネコとしては非常に珍しいという。「石垣空港建設時に化石が発見され、現在生息しているものと同種であるはずだが頭蓋骨部分の形状が当時のものとは違っていた。捕食環境の変化によるものだと思われるが、これは変質した自然環境での捕食活動によってイリオモテヤマネコの固有性に影響をもたらす可能性も示唆する」と話した。